「三位一体型の図」なんていきなり言われてもなんのことやら? な感じですが、要するにこういうタイプの図です。
一般化すると「三要素」を正三角形の頂点に配置し、中央に「主題」、下にキャプション(ちょっとした説明文)をつけるというパターンですね。
こういうタイプの図を開米は「三位一体型の図」と呼んでいます。1つの主題に関連する要素が3つある、という場合に手頃に使える便利なパターンです。
しかしこのパターンは「ビジュアル的にバランスがいいので、スッキリきれいに簡潔に見せたいときには役に立つ」ものの、「その問題についての読者の理解を深める役には立たない」ので注意が必要です。手短に言えば、
- キーワードの丸暗記だけで役に立つときは使ってもいいですが、
- 問題の構造をきちんと理解させなければいけないときは使うべきではありません。
さて、ここで「問題の構造」という言葉が出てきました。これが何のことかを知るために、問題の構造が違う2つの事例を見てください。
両方とも三位一体型で書かれていますが、本当にこれで良いのでしょうか? もちろん、良いわけがないのです。この書き方では「問題の構造」の違いがまったく表現されていないので、読者の理解は丸暗記以上には深まりません。
その理由を詳しく説明します。
たとえば「一般家庭やオフィスで火事を防ぐための基礎知識」を教えるときに「燃焼の三要素」の話題を出すとしましょう。その場合は「酸素」がなくなることは考えにくいので、「火事を防ぐ」ためには残りの2つ、「可燃物と熱源を離しておく」ことが重要です。そのイメージを伝えるために役に立つのはこんな図です。
これが「問題の構造」です。三位一体型の図では「火事を防ぐなら可燃物と熱源を離しておくことが重要だ」という一番肝心なポイントがまったく表現されていないことがおわかりでしょう。
一方、もうひとつの「肥料の三要素」にはまた違う構造があります。
実は、三要素である「リン、窒素、カリ」にはおおむねこんな作用があります。
リン:植物の開花・結実をうながす
窒素:植物の茎や葉を作る
カリ:植物の根の発育を促進する
であれば、「肥料の三要素」を教えるのには三位一体型よりもこんな図のほうが10倍役に立ちますね。
図の出典:肥料の三要素(ひりょうのさんようそ) | 写真でわかる園芸用語集|見て納得!かんたんガーデニング用語辞典
これが、「肥料の三要素」に関する「問題の構造」です。
「燃焼の三要素」と「肥料の三要素」は「問題の構造」がまったく違うということがおわかりいただけたでしょうか?
これほど構造が違うものをどちらも「三要素」だからといって「三位一体型」という単純な三角形で表して通じるわけがないのです。
だから、「問題の構造」まで通じるように教えたい/伝えたいなら、三位一体型ではなくきちんと構造を考えて、それを表現した図を書かなければいけません。
それはなかなか面倒くさいことなのですが、その面倒くささにきちんと向き合わなければ「伝わる」説明はできないのです。
なお、そうは言っても実際に「問題の構造」を考えて図解するのは大変なので「代わりに書いてほしい」というご依頼もよくいただきます。その種のお仕事のご相談は絶賛受付中ですので、詳しくは開米までお問い合わせください