ロジカル・コミュニケーションの5つの類型を知っておこう

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プレゼンテーションには論理性が必要でしょうか? 答えはもちろんYESです。プレゼンテーションは普通、何らかの「問題提起」を行い、「解決策」を提案し、「行動」を促すために行います。そこに論理性がなければその提案は受け入れられないでしょう。

したがってプレゼンテーションは「ロジカル・コミュニケーション」の一種なのですが、実はロジカル・コミュニケーションには5つのタイプがあるということをご存じでしょうか? それを知っておくとプレゼンテーションに限らず日常業務でのコミュニケーションにも役に立つので、この機会に知っておいてください。

では具体的に5つのタイプとは何なのか? まずはこの図をご覧ください。

真ん中の「現実世界」から「実行」までの1本真っ直ぐつながるラインは「問題解決のプロセス」を表しています。現実世界で何か問題が起きたとき、その状況を把握して方針を立て、詳細な計画に落とし込んで実行すれば解決するというわけです。

この「問題解決」の過程のどこかで「現場担当者」は「意思決定者」に報告や提案をします。

かくかくしかじかの問題が起きました(報告)。これこれの方針で対応してかまいませんか?(提案)

というわけです。つまりこれが「プレゼンテーション」です。プレゼンテーションを受けた「意思決定者」の返事は細かいことを省けば究極的には「OK/NG」のいずれかです。OKならばその方針を詳細計画にして実行するわけです。

このような「問題解決のプロセス」の中で、赤文字で書いてある5つの単語が「ロジカル・コミュニケーションの5類型」です。列挙すると、

  1. ヒアリング
  2. レポーティング
  3. ティーチング
  4. インストラクション
  5. プレゼンテーション

の5種類ですね。

この5種類、それぞれ目的が違い、押さえておくべきポイントが違います。ただし、現実の「プレゼンテーション」は他の4種の要素を多かれ少なかれ含むことが多く、そのバランスをうまく取っていかなければなりません(これがプレゼンの難しいところです)。

 

というわけで今度はプレゼン以外の4種類について考えます。

ヒアリングとレポーティングは「現実世界で起きた問題の状況を把握する」ためのコミュニケーションです。両者の違いはコミュニケーションを主導する人間がどちら側かということで、問題を直接体験したAさんと、状況を把握したいBさんが別な人であるときに、A→Bの方向で行うのはレポーティング、B→Aの方向で行うのがヒアリングです。この段階では、「事実を正確に把握する」ことが重要ですので、文章だけだったり箇条書きをずらずら並べただけだったりの、整理されていないレポートでも許されることがあります。

 

ティーチングというのは「知識」を伝えるコミュニケーションです。例えば「問題」が「隣の家で火事が起きている」というものだたとしましょう。その火を消すためにどんな消火方法を取れば良いのか? それを判断するためには「知識」が必要です。例えば燃えているのが木や紙の場合と石油の場合とでは有効な消火方法が大きく違います。その知識を、火事が起きてから慌てて勉強しても間に合いませんので、企業では業務で遭遇しそうな問題への「知識」は事前に教育しておかなければなりません。こうした「知識」を伝えるのも重要なロジカル・コミュニケーションの1つで、レポーティングに似た面もありますが、ハッキリと違う面もあります。 たとえば技術教育をするような場面で行うのがティーチングです。 エンジニアの仕事をしているとそんな場面にはよく出くわしますよね? 技術系のイベントで新技術紹介のプレゼンテーションをするような時も、実際にはこの「ティーチング」要素が強く必要なケースがよくあります。

 

インストラクションというのは「実行」を指示するための手順書のようなものです。これは一見ティーチングに似て見える場合もありますが、その実まったく違う面もあります。「手順書」は、「知識の乏しい人でもそれにしたがって作業をすれば問題を解決できる」ように作らなければなりません。一方、ティーチングの目的は「知識を身につけてもらうこと」です。目指すゴールと前提条件が違うため、インストラクションとティーチングの構成原理は大きく違うのです。 技術系のプレゼンテーションをする時でも、特定の状況で特定の目的を達成するためのHow-toを紹介する場面では実際にはこの「インストラクション」を行っているケースがよくあります。

 

「プレゼンテーション」は実は以上4種類のすべてを含む形で使われている用語だということに注意してください。狭義のプレゼンテーションは「意思決定者に提案をして行動を促すコミュニケーション」のことなのですが、その過程でレポーティングやティーチング、インストラクションの要素が含まれるケースは珍しくありません。さらには実のところレポーティング、ティーチング、インストラクションそのものを「プレゼンテーション」という名前で呼んでいる場合もよくあります。

そんなわけで、あなたが「プレゼンテーション」をするときも、この5類型のどれに近いプレゼンをしようとしているのかはよく考えるようにしてください。ヒアリングとレポーティングは同一視していいので実際には4種類のどれにあたるのか? ということです。

たとえば、「プレゼンテーションでは、言いたいことを一言にまとめた、わかりやすいメッセージを伝えろ」というふうに聞いたことはありませんか? また、プレゼンの教科書的な本を読むと必ず「情報量を極力減らせ」とも書いてあるはずです。これらは、「狭義のプレゼンテーション」についてであればまったくもって正しい指針です。しかし、この指針はティーチングやインストラクションについては成り立ちません。もしあなたのプレゼンテーションが実はティーチングやインストラクション、あるいはレポーティングを主眼としている場合、一般的なプレゼンテーションの原則に従うことがかえって失敗を招く原因となることもあり得るのです。

 

ロジカル・コミュニケーションには5つの類型があり、「プレゼンテーション」はそのすべてを含むことがある。このことをぜひ頭に入れてプレゼンの準備を進めてみてください。

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