MECEとロジックツリー

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ロジカルシンキングの基本

「MECE」と「ロジックツリー」というのは、いわゆる「ロジカルシンキング」の講座では必ず出てくる基本的な考え方です。どちらも理屈としては単純なものなので(まあ、実際やろうとすると難しいのですが……)最低限の基本を知っておきましょう。

MECEというのは、あるテーマに属する複数のことがらを整理するにあたって、ダブリもモレもないように分類を作る考え方でミーシーまたはミッシーと読みます。この分野では有名な参考書籍「問題解決プロフェッショナル」(齋藤嘉則著)から図版を引用します。

MECE=ダブリなく、かつ、モレなく。

開米がざっと四半世紀前に初めてこの話を聞いたとき、そんな単純な概念がロジカルシンキングの基本なの? と不思議に思ったものです。……実際にやってみるまでは。

ところが、実際にやってみるとこれが難しい難しい。現実に世の中で使われている言葉、概念はMECEを意識して作られたものではないので、なかなかうまく行かないのです。

たとえば、「世の中にはどんな自動車がありますか? 思いつく種類を片っ端から挙げてください」と言われて、「軽自動車、普通車、SUV、パトカー、救急車」という5つを思いついたとします。

そこでこの5つを「自動車」の分類として列挙すると、早速「ダブリもモレもある、非MECEな分類」の出来上がりです。

「軽自動車」「普通車」というのは排気量や車長などのサイズによる分類、SUVはスタイル、パトカーや消防車は用途による分類です。つまり、異なる観点の分類を混ぜこぜにするとMECEにならないわけです。

MECEであることが重要なわけではない

MECEはロジカルシンキングの基本、と言いつつそれを否定するようでもありますが、MECEそれ自体が重要なわけではありません。たとえば人の集団を分類する時の基準は無数にありますが、どの基準が重要かは状況によって千差万別です。

学習用品屋さんにとっては「子供の年齢」が重要だし、ペット用品屋さんにとっては「ペットの有無」が重要です。つまり、「分類した後でその情報を何に使うのか?」という、情報の用途/目的に合った分類基準を選ぶ必要があります。

「基準」の中にはMECEにしやすいものとしにくいものがあります。たとえば「年齢」は10代、20代、30代……のように形式的に区切っていけばとりあえずMECEになりますが、「趣味嗜好」をMECEにするのはきわめて難しいでしょう。しかし難しくてもたとえばレコード屋さんなら年齢で区切ってもあまり意味がないので、音楽のジャンルという「趣味嗜好」の一種での分類を第一に考えるのが普通です。

つまり、「どの基準が重要なのかを見極めること」が大事で、MECEであるかどうかは二次的な問題なのです。

……と、いったんそう言っておいてロジックツリーの話に移りましょう。

ロジックツリーは課題をツリー状に分解したもの

ロジックツリーというのは何か「課題」があるときにそれを「MECE」の考え方をできるだけ守ってツリー状に分解整理したものです。また「問題解決プロフェッショナル」(齋藤嘉則著)から図版を引用します。

左端の頂点に「主要課題」を置いて、右に向かって1階層目、2階層目とそれぞれMECEになるようにより具体的なものへとブレークダウンしていきます。(3階層目以下はあまりMECEにこだわらなくても可)

具体例も引用するとこの通り。

1階層目、2階層目、3階層目とだんだん具体的なものが出てくるのがわかりますか? これがロジックツリーです。

ロジックツリーもMECEと同じで理屈としては単純です。ところが実際にやろうとすると難しい。それは一体なぜなのか? と、あれこれ四苦八苦して考えているうちに気づきました。

難しいのは、目的がハッキリしていないからだ、ということに。

なんらかの集団を分類するためには分類の「基準」が必要ですが、それは分類した後でその情報をどう使うかという「目的」から逆算して決まるもので、目的があいまいな状態で分類しようとしても(MECE、ロジックツリーを作ろうとしても)うまく行かないのです。

具体例を出しましょう。

まずはこの図を見てください。犬と猫の種類をいくつか挙げたものですね。

もし、単に「ペットが飼いたいなあ」と思っている人に対してペット選びの参考にするならこのままの分類でいけます。犬派・猫派という言葉もあるぐらいで、犬猫の分類を最初に出すのは十分合理的です。

ところが、もし目的が「ワンルームマンションでペットが飼いたいなあ」というものだったら? その場合は大きな動物は飼えないので、動物種よりも「大きさ」で分類してもらった方が考えやすいです。

つまり、分類される集団である犬猫のほうは同じでも、「目的」が違えば基準は変わってしまうわけです。

ところが、この「目的」があいまいなままで考えているケースが実は非常に多いんですね。そうすると基準を明確に出来ないのでなかなかMECEもロジックツリーも作れません。

MECEを意識することの意外な効果

「MECEであるかどうかは二次的な問題で、あまり重要ではない」と先ほど書きましたが、でもやっぱりMECEを意識して考えるのは大事なんですよ。それは、MECEな分類を作ろうとしてうまく行かず、こうしちゃどうだああしちゃどうだとあれこれ違う角度で考えるうちに「目的」を明確にできることがあるからです。ああでもないこうでもないと試行錯誤を重ねると、突然「あ、そうか!」とひらめくように気がつきます。

じゃあ最初から「目的」をきちんと考えればいいのでは? という気もしますが、実はそれもなかなかうまく行きません。「目的を明確にした」つもりでも実はそうなっていないことが多いからです。

そういう場合はMECEなロジックツリーを作ろうとしてもうまく行かないので、何度も何度も作り直しているうちに、「あ、実は本当の目的はこれなんじゃね?」と、目的が不明確だったことに気づきます。

そんなわけですので、MECE&ロジックツリーという考え方は単純そうに見えてもなかなか難しいのですが、とにかく何度も試行錯誤を繰り返すことが大事なので、うまく行かなくてもめげずに粘りづよく考えてください。

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