ロジカル・コミュニケーションの5類型

投稿者: | 2020年10月1日
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ロジカル・コミュニケーションには5つの類型がある

仕事をするにはロジカルなコミュニケーション能力が必要ですが、ロジカル・コミュニケーションといってもいくつか性格の違うものがある、ということはあまり知られていません。

私、開米はそれを大まかに5つに分けてロジカル・コミュニケーションの5類型と呼んでいます。まずはこの図をご覧ください。

真ん中の「現実世界」から「実行」まで、上から下へ1本真っ直ぐつながるラインは「問題解決のプロセス」を表しています。現実世界で何か問題が起きたとき、その状況を把握して方針を立て、詳細な計画に落とし込んで実行すれば解決するというわけです。この過程のどこかでいくつかの異なるタイプのコミュニケーションが発生します。

レポーティング/ヒアリング

まず必要なのが「状況把握」のためのレポーティングまたはヒアリングです。例えば「現実世界」で起きた問題が「火事発生!」というようなものだった場合、「もしもし、こちら倉庫です。火事です!」というのがレポーティング、「何が燃えてる? 火の勢いは? 消火器はあるか?」というのがヒアリングです。

要は問題を直接体験した人(図ではAさん)が行うのがレポーティングで、状況を把握したいBさんが行うのがヒアリングです。

電話のようなリアルタイムなコミュニケーションではこの2つが同時に行われる場合もあるし、レポートを文書で提出する場合は時間差ができます。いずれにしても「状況を把握したい」という目的は同じです。この段階ではまずは「事実を正確に把握する」ことが最低限のラインとして重要ですので、文章だけだったり箇条書きをずらずら並べただけだったりの、整理されていないレポートでも許されることがあります。

ざっくばらんな言い方をすれば「火事を報告するレポーティングでスティーブ・ジョブズのプレゼンの真似をしても無駄」じゃないですか? 1分1秒を争う火事対応が必要な場面で、もったいぶって「One more thing…」なんてやってる暇はありません。したがってヒアリングやレポーティングはプレゼンテーションとはまったく違うものだと考える必要があります。

ティーチングは知識/スキルを向上させるもの

ティーチングは基本的には「知識」を伝えるコミュニケーションです。例えば「火事が起きている」ときにその火を消すためにどんな消火方法を取れば良いのかを判断するためには「知識」が必要です。燃えているのが木や紙の場合と石油の場合、それぞれに効な消火方法の知識を火事が起きてから慌てて勉強しても間に合いません。そこで企業では業務で遭遇しそうな問題への「知識」は事前に教育しておかなければなりません。こうした「知識」を伝えるのも重要なロジカル・コミュニケーションの1つで、レポーティングに似た面もありますが、ハッキリと違う面もあります。

たとえば、今まさに火事が起きているという進行中の事態を伝えるのはレポーティングであって、わかったことを逐一、つまり整理されないままで語っていってもかまいません。しかしティーチングの場合は情報を整理して伝える必要があります。したがって技術教育をするような場面ではティーチングの必要な場面が多いものです。技術系のイベントで新技術紹介の「プレゼンテーション」をするような時も、実際にはこの「ティーチング」要素が強く必要なケースがよくあります。

インストラクションは「実行指示」

インストラクションは「実行を指示する手順書」です。ティーチングと紛らわしい面があるので、下記の図を見ながら考えましょう。

火事が起きているという報告(レポーティング)を受けて「紙が燃えている」「火は小さい」と状況を把握したとします。ここで、「紙火災なら有毒ガスの恐れは少ない、火が小さいうちは消火器で消せる」という知識があれば、「消火器で初期消火を試みつつ、消防署へ連絡しよう」という方針を立てられます。

この「知識」は、火事という事件が起こる前に学んでおかなければいけません。起きてから慌てて本を読んでいる暇はないのです。その知識を与えるのがティーチングです。

一方、方針を詳細化・具体化したものが「計画」です。「消火」と「消防署への連絡」という役割をそれぞれA君、B君にやらせよう、という形で具体化してますね。

最後にそれぞれに例えば「A君、消火器持って行って火を消して!」と指示するのがインストラクションです。

このインストラクションとティーチングを混同している例が多いのですが、以下のような違いがあります。

ティーチングの目的は、相手が「考えられる」ようにすることであり、「考える」つまり「迷う」体験も含めて設計しなければなりません。知識を与えるだけでは駄目で、例えば練習問題を用意して「さあ、こういうケースではどうする? 考えてみな」と問いかけ、考えさせ、悩ませるところまでやってティーチングになります。

インストラクションの目的は逆に「相手が迷わず実行できるようにする」ことであり、どこで何をどのようにいつまでやるのかを明確に示す必要があります。

手短に言えば「相手に考えさせるのがティーチング、考えなくて済むようにするのがインストラクション」ということです。

この2つはまったく違うものなので絶対に混同しないようにしてください。

プレゼンテーションは?

「プレゼンテーション」は実は以上4種類のすべてを含む形で使われている用語です。狭義のプレゼンテーションは「意思決定者に提案をして行動を促すコミュニケーション」のことなのですが、その過程でレポーティングやティーチング、インストラクションの要素が含まれるケースは珍しくありません。

そんなわけで、あなたが「プレゼンテーション」をするときも、この5類型のどれに近いプレゼンをしようとしているのかはよく考えるようにしてください。ヒアリングとレポーティングは同一視していいので実際には4種類のどれにあたるのか? ということです。

たとえば、「プレゼンテーションでは、言いたいことを一言にまとめた、わかりやすいメッセージを伝えろ」というふうに聞いたことはありませんか? また、プレゼンの教科書的な本を読むと必ず「情報量を極力減らせ」とも書いてあるはずです。これらは、「狭義のプレゼンテーション」についてであればまったくもって正しい指針です。しかし、この指針はティーチングやインストラクションについては成り立ちません。もしあなたのプレゼンテーションが実はティーチングやインストラクション、あるいはレポーティングを主眼としている場合、一般的なプレゼンテーションの原則に従うことがかえって失敗を招く原因となることもあり得るのです。

ディレクションとは?

ディレクションは「プレゼンテーションを受けた意思決定者が大まかなOK/NGを伝えるもの」です。インストラクションは実行すべき内容を事細かに伝えるのに対して、ディレクションでは「よし、やってくれ! 細かいことはお前に任せた!」というのがディレクションです。

5類型を区別しよう

というわけで、ロジカル・コミュニケーションには5つの類型があることをぜひ頭に入れておいてください。。

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