文脈を共有している人は気づかない、あいまいな表現

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(4/4追記:当投稿を整理しなおして「基本パターン・インデックス」に掲載しました

ある会社の社員が直近の業務に関して書いた報告書を下読みして一次評価する仕事をしております。

そんな中で見つかった、ちょっとした「あいまいな文」の例です。

【上司から期待されたこと】
開発工程や仕様書などの基本的な知識を有し、補助ありで設計・製造業務を実施できること。

さて、この短い文のどこが「あいまい」なのでしょうか?

文脈としては、社員A、その上司B、役員Cという関係の中で、社員Aから役員Cに向けて、「今期のプロジェクトではこのような仕事をしました」という報告をするためのものです。

お互いの勤務地も離れているため、CはAのことをよく知らない関係と考えてください。だからこそ、理解を図るために、および社員Aの「書く力」のトレーニングの一環として、その会社ではこのような報告書を書かせている次第です。

さて、この短い文のどこが「あいまい」なのでしょうか?

答えは・・・・

 

 

 

 

「有し」だけだと、既に身につけていることを表しているのか、これから身につけることを求められているのかが不明です。

つまり、以下の2種類のどの意味かがわかりません。

  1. このプロジェクトを通じて開発工程や仕様書などの基本的な知識を身につけて、今後は補助ありで設計・製造業務を実施できるようになること。
  2. これまでに得た開発工程や仕様書などの基本的な知識を活かして、このプロジェクトでは補助ありで設計・製造業務を実施すること。

直接の上司であるBへの報告なら、文脈を共有しているため誤解が起きないのですが、それがないCへの報告だとこれを明確に書き分けなければ通じません。

こうしたちょっとしたあいまいさが積み重なると大きな問題になってしまいますが、この種のあいまいさは書いている本人だけでなく、文脈を共有している直属上司も気づきにくいためなかなか指摘されないものです。結果として、「あいまいさのない文を書く能力」がなかなか伸びないことになります。

第三者が添削をするとその種の問題を指摘できるため、私が一次評価を引き受けているわけです。

 

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